呼吸困難 治療にあたる医療者が、前もって知っておくべき背景情報

呼吸困難の治療にあたる医療者が、前もって知っておくべき背景情報

  1. 本人が判定するべき症状:呼吸困難とは、呼吸に伴う不快な「症状」(米国呼吸器学会,1999  など)と定義され、家族や介護者を含む他者判定による投薬は危険=予想外の呼吸停止をおこしうる (Harold,1995)
  2. 重要な症状:中等度以上の呼吸困難は、末期がん全体の約50%に達し、肺転移および不安感が重症化因子 (MDアンダーソンのBruera,2000) —-乳がんの肺転移は重症呼吸困難の典型例
  3. じゅうぶんなコントロールは難しい症状の1つ:緩和ケアチームや呼吸器科医のケアでも治療成績が良くない(Higginson,1989 ; Meurs 1993)
    安静時の重篤な呼吸困難は予後不良、であり鎮静となる頻度が多い。(Weins S ,2000ら)
  4. 約3/4は心肺に原因があるとされ(OxfordTextbook, 2006)、原因病態が非がん性である事もまれでない(Meurs,1993)。そして、がん性呼吸困難の原因の多くは治療可能であり、少なくとも可逆的要素がある事が前向き研究で証明されている(Dudgeon,1998)
  5. 進行がん患者を苦しめる中等度以上の呼吸困難に対して、原因病態を探索するための方法論は確立していない。米国家庭医学会(AAFP)では外来や往診患者の急性呼吸困難に対する鑑別疾患リストを公開している。および米国の代表的な内科教科書Medical Diagnosis and Treatmentには「急性呼吸困難をきたす鑑別疾患は有限である」として疾患リストが掲載されている。
  6. 呼吸困難に対する治療方法を系統的に叙述した学会ガイドライン(アルゴリズム)は普及している—-米国の臨床腫瘍学会(ASCO)と米国家庭医学会(AAFP)が代表的、とくに前者に掲載されたアルゴリズムは癌治療医の緩和ケア教材