悪心嘔吐への薬物治療について

悪心嘔吐への薬物治療について

★ 上記のレセプター推定にもとづいて、5カテゴリーの薬剤を投与する(薬剤名はすべて商品名)。レセプターの関係図からみても、ドパミンとセロトニンレセプターをブロックすることがCTZに近いので「盲目的な治療の有効率」が高いことが推定できる。

しかし、過去の有効性レビューでは(米国グレアら、2004年)、胃内容排出障害へのプリンペラン と消化管狭窄 へのステロイド投与は強いエビデンスがあるが

セレネース、5-HT製剤等の効果は示されなかった。よって病因推定が必須です。

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(注意-1 緩和ケアにおける制吐薬には保険適応がないものが多い(例、オピオイド

による 悪心嘔吐へのノバミンなど)、特に5-HT3製剤は、欧米では、がん性腹膜炎などの対症療法として用いられるが、日本では抗がん剤や放射線照射の副作用対策以外は保険適応外である。よって査定を回避するためのレセプト付記が必要なこともあります ⇒他の制吐薬は無効で緩和治療を行いQOL保持・在宅医療への移行をはかるために必要だったことを審査員に説明。

(注意-2) 制吐薬には、それぞれ副作用があります。投与前に、病棟や緩和チームの薬剤師に相談することを推奨します。

ほとんどの副作用トラブルは、患者がもつ病態を悪化させることで起きます。

典型的なサンプルを以下にしめしました。

・ 排尿障害や排便障害がある症例に、抗コリン薬を投与して重篤化させてしまう

・ 夜間だけあった軽いせん妄が、抗ドパミン薬を除く制吐薬により終日の重症せん妄へ

・ 誤嚥傾向があり、何とか飲食している高齢者が、抗ドパミン薬で(特に麻薬併用)誤嚥

性肺炎を発症。

・ 抗ドパミン薬を長期投与して、薬剤パーキンソン症候群(表情が乏しく、動作が鈍く歩行困難に、震戦はめだたないことも多い)やアカシジア(夜間不眠でじっとしておられず、怒ったような感じが続く、大多数の症例は下半身を常時動かしている)を発症。

高齢者で、基礎にパーキンソン症候群(小さな脳梗塞による)を持っていると副作用は「早期に」「重篤に」なると思われる。

緩和ケアの原則=「一歩先を読んだ治療」で予想外の事態を回避しましょう。