呼吸困難 モルヒネを投与するときのチェックリスト

モルヒネを投与するときのチェックリスト: 対症療法のなかでも、モルヒネは(特に初期投与では)抗不安作用があるため、もっとも強力な治療法であり、がん患者への効果が二重盲検試験で確認された唯一の薬剤である。
詳細は以下のリストに記載した、経験の少ない医師は専門医に相談するか、リストを通覧してから投与してください。

がん疼痛のガイドラインに準じて、モルヒネ投与の原則は

  1. アルゴリズムの順番どおりに投与すること (By the Algorithm)
  2. 用量調節を個人差に準じて行うこと (For the Individual)
  3. 副作用対策と本人・家族の説明責任を忘れない(With Attention to Detail)
  4. 投与経路を、本人・家族QOLが最適になるように(By mouth)

ただし、By the Clock =血中濃度の維持を図る、については、疼痛とことなり呼吸停止リスクを考慮(上記③の原則を優先)して、間歇的な投与からの開始を推奨します=いきなりの徐放製剤内服や持続非経口投与は危険です麻薬で呼吸困難をケアする前にチェックすべき項目

 

  • モルヒネやオキシコドンによる呼吸困難治療の注意点として
    「苦しい」という本人の訴えで投与することが重要
    →付き添い家族やナースによる「つらそう」「頻呼吸をみてるのがつらい」という本人確認なし&医療者の判断で増量すると「予想しない」呼吸停止や窒息イベントになりえます。特に意識状態がわるい、脳転移、せん妄ケースでは要注意!
    →「呼吸抑制を起こすモルヒネ」がなぜ有効か?を説明してから(医療者間でも)
  • モルヒネやオキシコドンは、炭酸ガスの蓄積に対する生体反応を落とす、咳嗽反射を落とす作用が強い—–これが呼吸困難の軽減作用でもあるが—–投与前から、自力喀出が難しい(いわゆるタン詰まりハイリスク)、すでにCO2ナルコーシス寸前のケースも、上記同様に、予想外の突然死亡がありうるので注意が必要
    ⇒推奨は、早めの投与で「耐性獲得」、ごく少量(通常の10%程度)から漸増
  • 頻呼吸でなくても、強い呼吸困難を訴える症例は稀でない。そして、モルヒネやオキシコドンは呼吸数を落とすことが抗呼吸困難作用の中心。
    よって、最初から呼吸数が正常より少ない<15/分、または投与により徐呼吸時(<10/分になって症例では、開始や増量・追加の適応はない
    ①抗不安薬やせん妄対応の検討、②鎮静 による対応 を考えるべきである。
  • モルヒネやオキシコドン投与を決断する=呼吸ドライブ(モーターコマンド)の亢進がある、という診察所見が必要である。喉頭引き込みサインは、見逃されがちであるが、もっとも多い「肺に(も)原因がある」ことを示す重要な所見。
    中枢からの呼吸努力をとらえるサイン
  • 逆に、この引き込みサインがなければ、麻薬の適応がなく、原因が肺原性でない
    例外は、①極度の筋肉疲労、②大量の腹水か横隔膜下に疼痛を伴う病変、③前頸部への皮下浸潤(乳がんや甲状腺がん)があると、目立たなくなることだが、まれ。
  • モルヒネを皮下注で投与するときの具体的なメソッド
    持続皮下注モルヒネの使用例