オピオイド投与のWHO5原則
- がん疼痛の薬物治療Gold StandardであるWHO方式がん疼痛治療法において鎮痛薬投与の5原則が推奨されています。
決して特殊なルールではなく、薬物投与の必要十分条件を示したものです。麻薬処方になれている医師のかたも、医療安全と有効性の両面から5原則を意識した処方を推奨します。 - 麻薬か、非麻薬かを決定= By the Ladder
痛みの強さに応じて、鎮痛薬のクラスを決める原則です。強い痛み(例 痛みでほとんど寝れない、患者評価では通常はNRSで7~8以上)が慢性的に続く場合は、非オピオイドでは除痛できない可能性が高い - 必要な用量を決定(調節)=For the Individual
オピオイドは、痛みをとりのぞくのに必要なドーズが患者ごとに大きく異なり、血中濃度と効果が相関関係にあるため、至適なドーズに至らないと「副作用はでるのに、痛みはとりきれてない」状態になります。
日本では文化的に欧米より、オピオイドへの恐怖・不安感が大きいこともあり、日本のオピオイド処方は、「ドーズ不足」のパーセンテージが高いと推測されています。 - 濃度を維持するためのスケジュールを最適化=By the Clock
オピオイドは、上記のように血中濃度と効果が相関するため、患者ごとの痛みのパターンにあわせて内服オピオイドの投与スケジュールを最適化するべきです。
例として、欧州緩和医療学会のGL推奨のように、寝る前には日中の2回分を服用することで夜間~未明の痛みを防ぐ工夫などがあります。 - 最適な投与経路を決める=By Mouth
オピオイドを投与する経路として、経口が可能であれば最も簡便でありQOL上ベストです。しかし、経口投与でQOLが低下(吐き気や便秘、眠気)する症例は少なくないので、持続皮下注、静脈投与、経皮貼付、坐薬、バッカルや舌下など様々な経路をQOLを指標として検討してください。
オピオイドの生体利用率(吸収率)によって、経路変更後のドーズはさまざまです。経験があっても、病棟薬剤師や緩和ケアチームにご相談されるダブルチェックをお勧めします。
また投与経路と薬剤を同時に変更する(ルートスイッチとオピオイドスイッチ)よりも経路だけ変更するほうが、医療安全的にはベターであると我々チームは考えております。 - 副作用対策と説明責任=With Attention to Detail
オピオイドには、副作用が必ず伴いますので副作用対策が必須です(便秘や下痢、眠気)。副作用対策のプランを治療を受ける患者さんやご家族に丁寧に説明するべきことは、WHO方式がん疼痛治療法で重要なポイントです。
「痛いまま、副作用で苦しむ」ことを回避するために、説明は文書を渡して丁寧に、患者家族の理解度に応じた説明が必要です。
緩和ケアチームは、説明用のツールを作成しておりますので、チームメンバーや病棟薬剤師に必要時はご連絡ください。 - 5原則の根本的理解=以下にしめすように適切な処方の必要・十分条件です。