疼痛のマネジメントの技術 非オピオイドの選択と副作用(NSAIDsとアセトアミノフェン(ACT))

A. 非オピオイドの選択と副作用(NSAIDsとアセトアミノフェン(ACT))

NSAIDSの投薬における注意点

  • 病歴問診の必要性=投与中・投与予定の患者さんについて、胃十二指腸潰瘍の既往・現病歴は必ずとってください。
    リスクがある場合は、ACTまたは低リスクNSAIDs(COX2選択性の高い薬剤、中京病院はモービックやセレコックス)が採用されています。
    (注意)これらのCOX2選択性NSAIDsは、腎障害については他の薬剤と同等であり、まれですが虚血性心疾患リスクも指摘されています。
    NSAIDs問診時に、忘れがちな項目として薬疹があるので忘れないでください。NSAIDsは抗生剤とともに使用後数日してからも薬疹をおこしやすい薬剤です。既往がある場合は重篤になる可能性もあり、問診と投与中の薬疹に注意が必要です。
  • 消化性潰瘍の予防にはプロトンポンプ阻害薬が必要です。H2ブロッカーは通常ドーズでは不十分です。
  • 抗がん剤のセットには高用量のステロイドが入るメニューが多いので注意が必要です。とくにアリムタ( ペメトレキセド)投与・投与予定例では、NSAIDsの腎毒性を増強するため、併用禁忌と考えましょう。
  • NSAIDsで除痛できず、オピオイドを開始するときにも、病状が安定するまでは中止せずオピオイドとの「併用」を推奨します。
    その理由は、① オピオイドにない抗炎症作用による鎮痛効果があるため鎮痛の質が良くなる、および② NSAIDs中止後のリバウンドによりオピオイドの増量ピッチがあがることでオピオイド副作用が強くでるからです。ただし、NSAIDs長期服用は副作用リスクが高まるので注意が必要です。
  • 処方サンプル
    経口可能…ロキソニン3T・セレコックス(100mg)2T など
    経口不能…ロピオン0.5~1.0A・生食50~100mL×3 定期+頓用(1日3Aまで)ボルタレン*坐薬25~50mg×3 定期+頓用(1日150mgまで)
  • * ボルタレン坐薬は最強の抗炎症・鎮痛作用をもつ特殊なNSAIDsです。特に骨盤内疼痛は、この薬剤でないと取れないこともあります。
    ただし、欠点としては、①連用による消化性潰瘍発生・出血リスクが非常に高いこと、②患者の依存性がおきうること、がありますのでご注意のうえ処方してください。

アセトアミノフェン(ACT)の投薬における注意点

  • 腎不全・腎障害にも使いやすい—透析患者さんでは、腎障害リスクがないのでNSAIDs処方される事があります。しかし消化性潰瘍や血小板凝集抑制などの副作用が予想を超えて高くなりえます。特に長期使用や消化性潰瘍の病歴がある症例ではNSAIDs処方を避けるように推奨します。
    このような症例では、ACT(アセトアミノフェン)を、2.4~4.0g 分3~4を推奨します。オピオイド同様に、血中濃度と鎮痛効果に相関関係があり、低用量(1回服用500mg未満1日量2g未満など)では鎮痛効果が不十分です。
  • 肝機能障害を起こす可能性があり、定期的な採血が推奨されます。ハイリスク例は、①脂肪肝・慢性肝炎などの肝疾患、②多発肝転移・胆汁排泄障害、③絶食などで低栄養状態(解毒酵素の枯渇リスク)です。
  • NSAIDsとACTの相加効果=NSAIDsだけで除痛できないが、オピオイド導入が難しい(すでに夜間せん妄がある、呼吸状態が不良など)と思われるときに特例的・一時的な時間稼ぎというべき方法として、NSAIDsに加えてアセトアミノフェン2.4~4.0g 分3~4の併用もご検討ください。
    特に、レスキュードーズとして夜間の痛みの頓用として800mg/回程度の処方がオピオイドによるせん妄悪化を回避することも可能です。
  • 経口不能例では、注射薬の「アセリオ静注用1000mg」が発売されており、点滴で使用できるようになりました。