オピオイドの選択と処方 オキシコンチンが飲めなくなった時の対応(By Mouthの原則)

痛みや全身状態が不安定な時は(例、イレウスや重篤な感染症など)、オキファスト注(オキシコンチンの注射薬)へ変更を推奨します。
理由は、モルヒネ注、フェンタニル注やパッチへローテーションをすることで、経路と薬種の双方を切り替えることとなり、思わぬ副作用リスクが大きくなること(特にドーズが大きいときは)、副作用と疾患双方による意識障害を鑑別する必要が生じる可能性が高いからです。
外来でオキシコンチンが内服できなくなったが、入院が短期間でも不可能な場合は、アンペック坐薬やフェンタニルパッチへの変更が必要になります。
患者ごとの対応が必要なので、以下に処方例を示しますが、安全のために薬剤師やチームドクターにご連絡ください。

入院ができる場合の処方サンプル

内服しているオキシコンチン量の0.75倍をオキファスト注(1Aにオキシコドン10mg含有 )に置き換えて24時間持続の 経静脈、皮下注投与する。

オキファスト注原液持続皮下注(静脈注も同じ)のオーダーサンプル
(サンプル)
オキファスト注5mLを2Ap/合計10mLをテルモTE361にセットして
時間0.05cc、レスキュードーズは、1.0cc/回、20分インターバルで
呼吸数・意識状態に変化なければ、繰り返してレスキュー可です。
(オーダーの注意点)
0.05cc/時の持続皮下注は、オキシコンチン内服で15mg/日とほぼ同じ鎮痛力価になります。
高齢者やハイリスク例での、オキシコンチン開始ドーズは10mg/日が妥当とされます(日本人を対象としての治験において証明すみ)。よって、このような症例に初めて導入するときは、生理食塩水でオキシコドン注を半分に薄めて使用することが推奨されます—内服で8mg/日オキシコンチン相当になります。
(希釈サンプル)
生食5cc オキシコドン注(50mg)1AP セレネース1Ap 時間0.05cc レスキューは1.0cc

入院ができない場合の処方サンプル

オキシコンチン40mg(=経口モルヒネ60mg)をアンペック坐薬10mg×4(6時間ごと)に切り替え。
レスキュードーズは 定期と2時間以上間をあけてアンペック10mg坐薬1個挿入。
(注意) 腎機能低下、すでに傾眠や夜間せん妄があるときは、この処方で疼痛が悪化する可能性が高いです。疼痛がパッチが効いてくるまで(8時間以上)出現するリスクを説明したうえで次にオキシコンチンを服用する(はずだった)時間に フェンタニルパッチ4.2mgを貼付してください。

● フェンタニル注による持続皮下注・持続静脈注について

投与デバイス:TE361 または CADDレガシー または シリンジポンプで原液投与
主な目的=モルヒネやオキシコドンによる腸管蠕動を抑制を避ける (例、再開通が見込める不全イレウスの症例)

【指示】
■ ベース量オーダー時のめやす
0.1cc/時のポンプ設定で、2.4cc/日=おおよそ0.1mgフェンタニル注/日=おおよそ内服モルヒネ 10mg/日=おおよそ内服オキシコドン 7mg/日
■ レスキューオーダーの目安:2時間分早送り。呼吸数≧10回なら30分あけて反復可
ただし、フェンタニルは0.5~1.0cc程度投与しないとレスキューとしての鎮痛効果が乏しい事が多いので、バイタルを確認して4時間以上の投与を行う必要があるケースが多いようです。
■ ベースアップ: 意識清明・RR≧10回を確認して5時間程度のインターバルで増量を検討

● モルヒネ注による持続皮下注・持続静脈注について

投与デバイス:TE361 または CADDレガシー または シリンジポンプで原液投与
主な目的= ①内服モルヒネで管理されていた症例で、不安定状態でのローテーションを避ける、② オキシコドンによる除痛成績が不良な「複雑な痛み」(注)と思われる症例への対応

【指示】
■ ベース量オーダー時のめやす
0.1 cc/時のポンプ設定で、2.4cc/日=24mgモルヒネ注/日=おおよそ内服モルヒネ 50mg~70mg/日=おおよそ内服オキシコドン 30mg~50mg/日
■ レスキューオーダーの目安:2時間分早送り。呼吸数≧10回なら30分あけて反復可
ただし、モルヒネの血中濃度を急激にあげることは、他のオピオイドに比較してせん妄発生のリスクが高いことに注意してください。特に高齢者や脱水・腎機能低下例では、疼痛治療とともにせん妄の観察や対症療法を要することがあります。
■ ベースアップ: 意識清明・RR≧10回を確認して5時間程度のインターバルで増量を検討