がん患者の口腔に起こるトラブル

  1. 口腔乾燥
    がん治療中は様々な理由により、唾液分泌が障害される。そのため進行がん患者の多くは口腔乾燥を自覚し、苦痛を感じている。特に終末期には様々な口腔乾燥の原因が複合的に関連し、またその時期に用いられる薬剤の多くが口腔乾燥を引き起こす副作用を持ちながら中止が困難tなこともあり、口腔乾燥は非常に強いものとなる。
  2. 口腔感染症
    がん治療そのものによる免疫抑制だけでなく、全身状態の低下や口腔内の清掃状態の悪化、唾液分泌の低下による口腔乾燥などが関連し、口腔内感染のリスクが上がる。口腔常在菌による歯周炎の急性化や粘膜の傷(義歯による褥瘡や粘膜炎など)の二次感染だけでなくカンジダやヘルペスウイルスといった感染症も起きやすくなる。
  3. 歯、歯周組織、義歯などの問題
    義歯不適合や歯科疾患の悪化によるトラブルは、歯科治療を行うことで、患者の苦痛や負担が増えることにならないように心掛ける。時には積極的、抜本的な歯科治療ではなく、対症療法的な処置が望まれる。
  4. 口内炎、口腔粘膜炎
    放射線や抗がん剤の影響による副作用として粘膜炎と全身状態の低下や免疫能の低下などによる粘膜炎があり、終末期にみられる粘膜炎はカンジダ性口内炎・ヘルペス性口内炎など感染が関与するものがほとんどである。
  5. 口腔内出血
    口腔内出血は直接生命に関わることは少ないが、QOLの観点から対応が必要。口腔、咽頭に腫瘍がある患者は出血のリスクが高い上、止血困難なことが多い。
  6. 口臭
    生理的な口腔の悪化のみならず、全身状態に起因する、がん患者特有の病的な口臭も起こる。
  7. 舌苔
    上皮組織や白血球および大量の細菌が苔状に堆積したもの。
  8. 味覚異常
    味覚異常は食欲不振に直結し、栄養状態の悪化を招く。
  9. 骨修飾薬に関連する顎骨壊死
    がんの骨転移のある患者に対して、骨折予防などで使用されるビスフォスフォネート製剤や抗ランクル抗体といった骨修飾の長期使用により、顎骨壊死という重篤な副作用が報告されている。